愛媛大会オンライン大会授業研究・研究発表内容についてお知らせいたします。
 
 


【授業研究】事前動画公開(10月9日~20日)及びライブ配信(予定)
 
A 研究テーマ「書に関する見方・考え方を深める指導方法の研究」
  書道Ⅰ 「書の美を求めて~自ら学ぶ古典学習の在り方~」
  愛媛県立松山東高等学校教諭   阿 部 秀 信 教諭

B 研究テーマ「書の魅力を地域に発信する学習活動」
  書道Ⅰ 「学校設定科目「松山学」(商業)との連携を通して」
  愛媛県立松山商業高等学校教諭  加 納 清 一 教諭

※授業研究内容は10月9日から20日に事前に動画で公開いたします。
※動画視聴URL及び授業研究PDFデータPW(パスワード)は、ご参加お申し込みの先生方のお申し込みの際のメールアドレスに送信いたします。(予定)



【研究発表】事前資料公開(10月9日~20日)及びライブ配信(予定)
 
○ 研究テーマ「文字文化への理解を深める学習方法の研究」
 「古筆の持つ空間・リズムの習得につなげる段階的指導の実践」
  愛媛県立松山中央高等学校教諭  正 岡 京 子 教諭

○ 研究テーマ「言語文化の理解を深める指導方法の研究」
 「愛媛の文人の書きぶりに学ぶ」
  愛媛県立今治北高等学校教諭   川 﨑 洋 子 教諭

※研究発表内容は全日本高等学校書道教育研究会ホームページから授業研究内容のPDFデータをダウンロードいただきます。
※今回のオンライン全国大会の開催では、研究集録の刊行は大会終了後の12月初旬を予定しております。これまでの全国研究大会では当日会場にて研究集録をお渡ししておりましたが、今回のオンライン全国大会では授業研究及び研究発表に関する資料は下記の予定で公開し、参加申し込みの先生方にダウンロードいただき、オンライン全国研究大会にご参加いただきます。

※研究発表内容は10月9日から20日に事前に資料を公開し、全日本高等学校書道教育研究会ホームページから研究発表PDFデータをダウンロードいただきます。
研究発表PDFデータPW(パスワード)は、ご参加お申し込みの先生方のお申し込みの際のメールアドレスに送信いたします。(予定)
 
 
 
 
 
 愛媛大会オンライン大会「授業研究内容」「研究発表内容」について(ご紹介)
 
 
 
■ 授業研究 A[書道Ⅰ]
 
「書の美を求めて~自ら学ぶ古典学習の在り方~」

      愛媛県立松山東高等学校   教諭 阿部秀信
 
 
 この度、全高書研愛媛大会にて研究授業をいたします。
 本校は藩校を前身に、正岡子規が学び夏目漱石が教えた旧制松山中学校を経て140年以上の歴史を持ちます。
 「自律・協同・創造」の校訓の下、一学年普通科9クラス、全校生徒1000人余りが伝統を受け継ぎ、グローバル社会で活躍できる人材を目指して学んでいます。
 平成26年度から5年間文部科学省の「スーパーグローバルハイスクール事業」に指定され、平成31年度からは同「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」に指定されました。
 その中で海外フィールドワークや教科の授業を英語で行うCLIL、課題研究など様々な取組を行っており、多くの生徒が国公立大学へ進学しています。 
 
 芸術科は音楽・美術・書道から1年次に芸術Ⅰが2単位開講され、3年次に文系の中で進路に必要な生徒に対し芸術探求3単位、芸術表現2単位が開講されています。書道Ⅰは単独クラスによる開講で7講座。それぞれ14~23名の生徒が受講しています。

 生徒が今後変化の激しさを増す社会に出ていくことを考えると、学校教育における芸術教育の価値は高まっていかざるを得ません。それは今回の学習指導要領の改訂にも明らかなように、社会から必要とされる人間像が、これまでの単なる情報処理能力の高さから、問題点を発見し、多くの人間と価値観を擦り合わせながら解決方法を模索していく能力を有するものへと変化しているからです。教科の学びを通してこれらの力を身に付けるという点では、芸術科には大きなアドバンテージがあります。

 過去の経験から、最も生徒がアクティブになり主体的に学びが行われるのは、教えられる側から教える側に立った時だと言えます。
 自らテーマを決め、人に伝えられるよう編集する過程で、自ら学び直し、深い学びに至ることができるはずだと考え、それが「書の見方・考え方を働かせる」ことにつながると考えました。
 
 今回の授業研究では、書道Ⅰ漢字の書を題材に、授業の目標を、「書道の魅力について生徒が生徒自身の言葉で語れるようになること」に定めました。既習古典の中から各自で好きな古典を選び、その魅力についてプレゼンテーションを行います。同じ古典やテーマを選んだ生徒でグループを作成し、それぞれのテーマに沿って、解説する魅力や内容、それに適した手法を協同で考えていきます。生徒各自がそれぞれの能力を生かしながら、書の魅力について語り合うことで、書への造詣を深めると共に、これからの社会を生き抜くために必要な能力を身に付けてほしいと願っています。

 今回はオンラインでの開催となりましたが、全国の多くの先生方の御指導、御助言をいただき、今後の指導に生かしていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 
 
 
 
■ 授業研究 B [書道Ⅰ」
 
「書の魅力を地域に発信する学習活動」
~学校設定科目「松山学」(商業)との連携を通して~

      愛媛県立松山商業高等学校   教諭 加納 清一
 
 
 この度、全高書研愛媛大会において、研究授業をさせていただくことになりました。
 本校は、「流通経済科」「情報ビジネス科」「地域ビジネス科」「商業科」の四科から成り立っており、今年度創立一二〇周年を迎える県内屈指の伝統校です。平成二十九年度に新設された「地域ビジネス科」は、令和元年度に初めての卒業生を出し、今年度五期生を迎えています。年々、その教育活動は認知されるとともに、地域の方から信頼され、評価を得ています。今年度も重点努力目標である「地域社会に根ざした商業教育の推進」に取り組み、地域に活力をもたらす人材の育成に力を入れています。
 芸術科の授業においては、音楽・書道から一科目を選択し、第一学年で「音楽Ⅰ」「書道Ⅰ」を二単位必修で行っています。

 今回の研究授業では、書道Ⅰの「漢字仮名交じりの書」の単元で「地域ビジネス科」の学校設定科目である「松山学」と連携をして実践しました。
「松山学」では、地域創生や観光などに関する有識者の外部講師による講演、愛媛大学・松山大学と共同で地域活性化につながる活動を行っています。
 来年度から実施される新学習指導要領では、社会に開かれた教育課程の実現や地域社会との連携・協力が今まで以上に求められます。書道の授業で何ができるかを考えた結果、地元の企業と連携し、松山から、書の魅力を発信し、筆文字の文化を醸成したいと考えました。

 松山市の道後にある「伊織道後湯之町店」と「大和屋本店」と協働して、実際に販売する商品の横に置くキャッチーなPOP広告を墨書したり、旅館に書を飾ったりする実践です。まず、代表の生徒数名が、実際の商店や旅館に行き、商品や旅館についての説明、接客などについて聞き取りを行います。その様子を撮影し、資料とともに学校に持ち帰り「ことば」を班で協力して紡ぎ出します。次に、草稿は、今年度愛媛県において導入された一人一台タブレットパソコンを用い、パワーポイントで作成します。草稿を用いて、作品を制作し、第一段階の作品を商店や旅館に持って行き、作品のねらいを説明しながら、意見をいただき、再度草稿や作品を制作します。クライアントの作品に対する意見も撮影し、生徒に授業で見せるので、クライアントの熱意が伝わり、意欲的に学習に取り組む生徒が多くいます。
 この作品を協働して、ブラッシュアップして行く過程が今回の実践的な学びになります。
 
 愛媛大会は、新型コロナウイルス感染症対策のため、オンライン開催となったため、授業の事前動画をアップする予定になっています。
 代表生徒が聞き取りをしている様子などもご覧になれますので、企業との協働学習が伝われば幸いです。
 全国の先生方に、直接お会いすることができず、残念な気持ちではありますが、ご指導ご助言をいただき、今後の授業改善に生かしていきたいと考えております。どうぞよろしくお願い致します。
 
 
 
 
■ 研究発表 A
 
古筆の持つ空間・リズムの習得につなげる段階的指導の実践
      愛媛県立松山中央高等学校  教諭 正岡 京子
 

 この度、全高書研愛媛大会研究発表テーマ「文字文化への理解を深める学習方法の研究」に基づき、新学習指導要領の改訂を踏まえ、書道Ⅰ「仮名の書」での授業実践を発表させていただきます。

 今回の研究発表は昨年度まで十二年間勤務しておりました愛媛県立今治北高等学校での実践となります。古筆の持つ空間や言葉のリズムに着目し、段階的な仮名の運筆法を構築することで、技術の習得から文字文化への理解へとつなげられないかをコンセプトに研究を進めてきたものです。

 本研究では、特に『連綿の視点で「仮名の書」を捉えることにより「仮名の書」の特質およびそれらを構成する諸要素への特性への理解が深まり、それにより「仮名の書」の技術も深められる』という新学習指導要領解説の変更点を踏まえ、「連綿」の強化に焦点を当てました。仮名特有の「スー・トン・スー」のリズムの習得に加え、古筆を小集団に分類し、文字分析を行うことで、行の流れや字形・連綿への理解を深めるための学習法の構築を目指し、教材の精選を図りました。加えて、学習内容の理解の深化と主体的な活動を促進させるため、視覚的なアプローチや作品の相互鑑賞を効果的に取り入れられるよう、タブレット端末を活用した授業実践にも取り組みました。
 私自身、タブレットの普及により、画像の拡大・縮小が高画質で容易に鑑賞できるようになり、古筆の線質の豊かさに驚かされ、古筆の見方が大きく変わりました。その体験を生徒たちにも体感できるように、仮名文字を拡大することで、筆の律動性を生かし書かれてあることを感じてもらえるよう、「ロイロノート」を活用した授業実践としました。
 古筆の拡大鑑賞を行い、文字の特徴を分析→揮毫→撮影→文字分析→動画撮影(リズムやフォーム確認)→回答共有(振り返り)といった一連の流れを作り、「インプット→アウトプット→インプット」を繰り返していくことで主体的で深い学びにつなげられるように、授業を構成しています。 
  
 文字文化は、中国・日本の歴史的背景や思想、自然美等と密接に関わり合い、様々な日本の伝統文化と相互に影響し合いながら培われてきたものです。昨今求められているグローバル化に対応する力を養うためには、まず自国の文化を知り、他者に伝える力が不可欠であり、日本の子供たちに必要な学びであると感じます。文字を素材として学ぶ「書道」という科目を通じて、何を教え、何を伝えればよいか、悩みは尽きません。

 新型コロナウィルスの感染症拡大により、教育の現場の有様も変わってきています。全高書研愛媛大会も、参加者の皆様に来県していただき、生徒作品等の掲示資料等も含めて全国の先生方のご指導、ご助言をいただきたいと、準備を進めてまいりましたので、とても残念に思っております。その反面、オンラインという形で、愛媛大会がどのような状況下であれ開催できますことは、何よりの喜びでもあります。
 例年よりも限られた時間での発表、研究協議の場とはなりますが、この機会を大切に、今後の教育実践の足がかりとしたいと考えております。初のオンライン大会ということで、参加していただく先生方に、分かりやすく内容を伝えることができるか不安な面もありますが、運営面でもZoom操作の研鑽を行い、スムーズな大会運営となるよう努めております。先生方のご参加をお待ちしています。よろしくお願いいたします。
 
 
 
 
■研究発表 B
 
言語文化の理解を深める指導方法の研究 ~愛媛の文人に学ぶ~
      愛媛県立今治北高等学校   教諭 川﨑 洋子
 
 
 この度、全高書研愛媛県大会の研究発表において、研究テーマ「言語文化の理解を深める指導方法の研究」に沿って「愛媛の文人に学ぶ」と題した、書道Ⅰ「漢字仮名交じりの書」において鑑賞の授業実践報告をさせていただきます。

 発表させていただく愛媛県立松山中央高等学校は、昭和六十二年に創設された、県内で最も新しい県立普通科高校です。普通科では珍しい英語コースや医療・看護系コースも設置しており、二年生からは、理数系、文系のコースを合わせた四つのコースに分かれて学習を行っていきます。
 芸術科の授業は、一年生で「音楽Ⅰ・美術Ⅰ・書道Ⅰ」(二単位・必履修)二年生(文系)で「音楽Ⅱ・美術Ⅱ・書道Ⅱ」(一単位)を選択することができ、三年生でも芸術系進学対象者が「芸術Ⅲ」(四単位)を選択することができます。
 
 愛媛県松山市は、正岡子規・河東碧梧桐・高浜虚子など偉大な俳人を多数輩出しました。よって、松山市は俳句に親しみ、俳句を愛するまち「俳都松山」と称され、市内の至る所に俳句ポストや句碑が建てられるなど、俳句は地域文化として根付いています。
 
 今回の授業では、正岡子規と河東碧梧桐の書を地域教材として取り上げました。二者は師弟関係にありながら、それぞれの俳句の趣向や書作品の書きぶりに大きな違いが見られます。二者の俳句の趣向や書風の違いを「言葉のリズム」(定型律と自由律)と「書の書きぶり」の両面から分析・鑑賞して理解を深め、最後に臨書するという授業を実践しました。この体験により、生活や社会において書が果たす役割や効用、書の美の意味や価値などを考え、興味をもって多彩な文字や書と豊かに関わる態度を養いたいと考えました。

 「漢字の書」「仮名の書」「漢字仮名交じりの書」三つの単元の既習の知識を生かしながら、書を構成する要素「作品構成」と「線質」に分けて書の比較・分析を行いました。「作品構成」では、連綿・筆脈、行の流れ・言葉のリズム(律の違い)に着目し、分析していきます。また、「線質」では二者の作品の一部を抜粋して、穂先の通る位置と運筆の速度(遅速の変化)に着目して用筆法を確認していきました。

 地元に生まれた偉大な文人の俳句を「書」の視点からアプローチし分析していく活動は、新鮮な取り組みであったと多くの生徒の感想に見られました。地域教材の活用は、書や文化に興味をもって関わっていくきっかけとして効果的であることを改めて感じることができました。限られた時間の中で「何のために」「何を使用して」「何を教えるか(伝えるか)」そのために「何が必要か」をもう一度見直し、芸術科書道を通して「豊かに生きる力」の育成を目指した効果的な指導を念頭に、授業改革に取り組んでいきたいと思います。

 今回、このような機会をいただきましたことに感謝するとともに、全国の先生方から御指導・御助言をいただいて、今後の授業改善に生かしていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いしたします
 
 
 
 【本部事務局より】
 
 今回の愛媛大会オンライン大会に向けて定期刊行物であります「全日本高等学校書道教育研究会会報 愛媛大会特集号」の刊行につきましては、事業計画の遅滞により発行が遅れておりますことお詫び申し上げます。
 
 御寄稿いただきました先生方及び参加申し込みいただきました先生方、また現在ご参加を検討いただいております先生方におかれましては、会報発行が遅れましたことにより、多大なご迷惑をおかけいたしました。
 
 長期にわたり取り組んでこられました愛媛大会でのご発表先生方の「授業内容」「研究発表」のそれぞれの発表要旨と研究活動の経緯・具体的な取り組みなどが、会員の先生方にこれまでのように全国大会前に紙面での公表に至らず、全国研究大会における研究内容の告知広報が大幅に遅れました。
 
 本来、会報でお知らせすべき愛媛大会オンライン大会の最重要となる教育課程の「授業研究」・「研究発表」の内容につきまして、会報にご寄稿いただきました阿部先生・加納先生・正岡先生・川崎先生のご執筆原稿を本部事務局に再度ご提供いただき、このたびホームページにより、ご紹介を進めさせていただくこととしました。
 
 今後、事業計画の各事業につきましては、会務運営のはかり業務の改善を図って参ります。
 
 
 引き続き、全日本高等学校書道教育研究会の事業計画にご協力賜りますようお願い申し上げます。